2005年05月02日

ゲームブックはなぜ、衰退したのか

現在、「タンタロンの100の回答」を書いているのですが、90年代にゲームブックがなぜ衰退したのか、という項目が長くなってしまったので、コラムとして扱うことにしました。

「90年代にゲームブックは衰退しましたが、原因は何だと思いますか?」

ゲームブック自体が面白くなくなくなった。ぼくのなかでの最大の理由は、それです。
ゲームブックはどんどん詰まれていき、崩したかとおもえばつまらない作品ばかり。
日本ゲームブック界の片翼を担う東京創元社でさえ、後期はつらいラインナップでした。
個人的にダメだったのは、「パンタクル2」、「暗黒の聖地」、「ネバーランドのカボチャ男」、「ワルキューレの冒険」、「夜の馬」、「カイの冒険」、「第七の魔法使い」
これは失意が大きかった順です。
(ちなみに、もう片方の翼を担う社会思想社の作品は、11〜20巻台につまらないSFが多かったこともあり、個人的には早くから切り捨てていました)

エニックスはスーパーファミコン後期までゲームブックを出版していましたので、業界的に頑張っていたかというとそうではなく、「ドラゴンクエスト4」以降は、タイトルの知名度のおかげで多くの人の手にとってもらったにも関わらず、ゲーム性がゼロ――ひどいものは、「ドラクエ」なのにゲームオーバーがない作品まである――で、ゲームブックの質が問われ、ゲームブック離れを決定的にしたと思っています。

また、テレビゲームのようなゲームブックが増えたため、ルールが複雑になったのも原因の1つです。
(たとえば、「スーパー・ブラック・オニキス」など)
ゲームブックとしてどんなに優れていても、テレビゲーム感覚で遊ぶべるゲームブックなら、テレビゲームで遊んだほうがいいに決まっています。
もともと、ゲームブックとテレビゲームは近い位置にあったとはいえ、ゲームブックらしいゲームブックが出なくなった――もしくは、ゲームブックらしさがテレビゲームらしさと紙一重だというメッキが剥がれてしまった――のは、ゲームブック業界として痛かったのではないでしょうか。
テレビゲームに流れてしまったという説は、あながちウソではないでしょう。

しかし、ゲームブックがつまらなくなったというのは、個人的には大きな原因ですが、それが、ゲームブックというジャンルがなくなった理由にはなりません。
絨毯爆撃部隊・双葉社のゲームブックが数多く刊行できたことが、作品の出来と売り上げが比例していないことを明らかにしていると思います。
まして、粗製濫造した出版社が衰退するだけならまだしも、ジャンルそのものが衰退するとはふつうはありえはずです。

ゲームブック衰退の最大の原因は、ずばり、出版社の力不足だったのではないでしょうか。
企業として、金儲けを目指すのは当前ですが、ゲームブックバブルの中、ゲームブックのことを大切に思い、作家や読者を育てようとした出版社がどれだけあったでしょう。
ゲームブックコンテストを開いていた東京創元社でさえ、応募数の減少を嘆くだけで、自ら、ゲームブック作家を育成しようという姿勢は、少なくとも表立っては見られませんでした。
いい作品が来るのを待つだけなら、誰だってできます。

ブームが過ぎ去り、社会思想社や東京創元社が、テーブルトークに路線を変更したことは、まさしく、出版社がゲームブックを切り捨てたことに他なりません。
本来、離れていった読者を呼び戻すには、最高のゲームブックを引っさげてこなければいけないはずなのに。
アレがダメならコレで。コレがダメならソレで。
つまり、ゲームブックというジャンルは、出版社が築き上げた、いつ崩しても問題ない砂の城でしかなかったのです。
やがて、ゲームブックの1つの時代を作り上げてきた両出版社は、自滅していきました。
そんななか、ゲームブックの第三勢力ですらなかった富士見書房が、TRPG「ソードワールドTRPG」でひと山あてたのは、なんという皮肉でしょうか。
「ソードワールド・ゲームブック」なるものが出ていれば、グループSNEが手がけただけに、さぞ傑作になっていたでしょう。

2005年現在、創土社と扶桑社からゲームブックが刊行されています。
ただし、その中で純粋な新作はたったの1作。それも、ブームの当時に書かれたものです。
推理小説業界は、「新本格派」と呼ばれるジャンルを引っさげて復活しました。
これは、自分が読みたい推理小説が出版されないから、なら、自分で書いてみようという人たちが築き上げたジャンルです。
(全員が全員、そうではありませんが)
これと同じように、ゲームブック業界に必要なのは、ゲームブックの「新本格派」の登場ではないでしょうか。
ゲームブックを書きたいと思っている人、そして、それを支援し、育成したいと思っている出版社。
その両方が存在しない限り、ゲームブックは所詮、復刊しかできないジャンルになってしまいます。

創土社の酒井さん、この道のりは果てしなく険しいと思いますが、諦めずに頑張ってください。
ゲームブックのことを真剣に考えてくれる編集者は、あなただけです。
posted by ドロシー! at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲームブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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